フランスの首都パリのルーブル美術館で28日午前、環境活動家がレオナルド・ダビンチの
代表作「モナリザ」にスープを投げつける騒動があった。
仏メディアが報じた。「健康で持続可能な食料への権利」
を訴えることが目的だったという。
絵画はガラス板で保護されており、損傷はしていないとみられる。
仏メディアなどで拡散している動画では、白いTシャツを着た女性2人が
複数回にわたって、モナリザにオレンジ色の液体をぶちまけた後、
絵画の前で「芸術と、健康で持続可能な食料への権利のどちらが大切か。
我々の農業システムは病んでいる」と叫ぶ様子が映っている。
AFP通信によると、2人は気候危機の問題をめぐって社会に変化をもたらす
ための「抵抗運動」を目的とした団体のメンバーで、モナリザにスープを
かける行為は「持続可能な食料のための社会保障を求めるすべての人に
有益な運動の始まり」と主張しているという。
フランスでは今月中旬から、欧州連合(EU)の環境規制や燃料税の
引き上げに反発した農家の抗議デモが地方都市から拡大。
29日には一部の農家がパリをトラクターで包囲する計画が出ている。
環境活動家らが抗議行動として芸術作品を標的にする事例はここ数年、
世界各地で相次いできた。
2022年10月にはロンドンのナショナル・ギャラリーに展示されている
ゴッホの「ひまわり」やオランダ・ハーグの美術館に飾られている
フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」にスープや赤い液体が
投げつけられる騒動が起きている。(ローマ=宋光祐)
環境活動家はなぜ名画を狙うのか 識者が語る「重要人物」と「資金」
ロンドンの美術館で今月14日、環境活動家がゴッホの絵画「ひまわり」に
トマトスープをぶちまけ、世界中で話題になりました。
その数日前にはオーストラリアの美術館で、環境活動家がピカソの絵の
ガラスカバーに手を接着させる騒ぎもありました。
なぜ、こうした過激な行為が繰り返されるのか。環境問題をめぐる
抗議活動に詳しい明星大の浜野喬士准教授に聞きました。
「ひまわり」にトマトスープをかけた環境活動家の女性2人は
どのような人たちなのでしょうか。
ジャスト・ストップ・オイル(JSO)という団体に所属している20歳と21歳
(いずれも事件当時)の女性です。
この団体は、今年2月にできたばかりの英国の環境保護団体です。
団体の活動歴は浅いですが、6月には同じくゴッホの「花咲く桃の木」の
額縁に接着剤のついた手をつけたり、幹線道路やガソリンスタンドを
封鎖したりする抗議活動を行い、これまでに数百人の逮捕者を出しながら
存在感を強めています。
どのような人たちで構成されている団体なのでしょうか。
逮捕者をみると、20代の若い人たちが多いです。
特に会費や細かい規則のない緩い組織で、参加したい人はオンライン会議に
参加すると、抗議活動の内容を指示されるようです。
少なくとも1千人以上はいるでしょう。
団体の実態は 逮捕者に五輪金メダリストも
今回の事件の数日前には、オーストラリアのメルボルンの美術館で、
展示中のピカソの絵画「朝鮮の虐殺」のガラスケースに手を接着
させた環境保護活動家がいました。
彼らは別の団体を名乗っていますが、JSOと関係があるのでしょうか。
過去にはこのような事件が起きていました。
ウォーホルの代表作が青インクまみれ。
環境活動家の抗議行動がオーストラリアでも発生
今年6月以降、ヨーロッパ各国の有名美術館・博物館で、アート作品を
標的とした環境活動家の抗議行動が相次いでいる。
オーストラリア国立美術館でも11月8日、アンディ・ウォーホルの
「キャンベル・スープ缶」シリーズが被害にあった。
11月8日、オーストラリアのキャンベラにあるオーストラリア国立美術館で
アンディ・ウォーホルの「キャンベル・スープ缶」シリーズが、2人の
環境活動家により青いインクで殴り書きされる被害にあった。
実行したのは、オーストラリア政府に化石燃料産業への補助金を直ちに
停止することを要求する市民グループ・Stop Fossil Fuels Subsidies(SFFS)。
同団体のプレスリリースによると、今回の行動の目的もオーストラリア政府に
よる天然ガスや石炭などの産業への財政支援を終わらせることだという。
なお、同国は世界最大の石炭輸出国であり、2021年の電力の71パーセントが
化石燃料によって賄われている。
参加した活動家のひとりは次のように述べ、オーストラリア政府に
化石燃料産業への巨額の補助金拠出を止めるよう主張している。
「ゴッホにトマトスープ」広げた波紋 美術館側も「気候変動は危機」
トマトスープにまみれたゴッホの「ひまわり」の動画が今年10月半ば、
衝撃とともにSNS上で拡散した。
英国の環境保護団体「ジャスト・ストップ・オイル」(JSO)の20代の
女性メンバー2人が、ロンドンのナショナル・ギャラリーに飾られていた
同作にスープをぶちまけ、こう訴えた。
「芸術と命、より価値があるのはどちらか」「地球や人々の
保護と一枚の絵を守ること、いったいどちらを気にかけているのか」
ガラスに覆われていた作品に大きな損傷はなかったものの、
同様の行為は世界各地で発生。
モネ「積みわら」(ドイツ・バルベリーニ美術館)や、
フェルメール「真珠の耳飾りの少女」(オランダ・マウリッツハイス美術館)、
ゴヤ「裸のマハ」「着衣のマハ」(スペイン・プラド美術館)、
アンディ・ウォーホル「キャンベル・スープ缶」シリーズ
(オーストラリア国立美術館)などが相次いで標的となった。
ゲリラ行為の舞台となった美術館
社会運動が絵画や彫刻を標的にするのはなぜか。
東京芸術大学の毛利嘉孝教授(社会学)は「様々な意味や文脈を背負った
芸術作品を狙うことで、破壊行為自体も象徴的なパフォーマンスとなりうるため」と分析する。
人種差別の撤廃を掲げて米国から世界に広がった「ブラック・ライブズ・マター」では、
奴隷貿易に関わっていたとされる人物の銅像が引きずり倒される例もあった。
また、美術館という場が近年、抗議活動などのパフォーマンスの舞台と
なってきたことも関係しているのではないか、と指摘する。
※環境活動家がベラスケスの《鏡のヴィーナス》をハンマーで攻撃。
「作品が受けたダメージは最小限」
「作品が受けたダメージは最小限」
2023/11/6午前11時(現地時間)、イギリス・ロンドンのナショナル・ギャラリーで、
ディエゴ・ベラスケスの代表作《鏡のヴィーナス》(1647~51)を環境活動団体
「Just Stop Oil」のメンバー2人が襲撃。
緊急救助用のハンマーで作品の保護ガラスが割られるといった事件が起こった。
襲撃の様子は同団体の公式X(旧Twitter)アカウントで公開されている。
同団体によるとこの襲撃は、イギリス政府が新たな石油と天然ガス開発の
ライセンスを事業者に認可したことに対する抗議だという。
この作品は以前も襲撃を受けており、1914年にはカナダ人の参政権運動家
メアリー・リチャードソンによって刃物で傷つけられたことでも有名である。
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