香港(CNN) 中国の習近平(シーチンピン)国家主席は12月31日の演説で、
国内の企業が苦戦し、雇用が厳しい状況にあることを認めた。
2013年以来、恒例となっている新年に向けた演説で、
習氏が経済的苦境に言及するのは初めて。
世界第2位の経済大国である中国は、需要の低迷や失業率の上昇、
景況感の悪化などによる構造的な経済減速に苦慮しており、習氏の
発言は同国が重要な局面を迎えている中でのもの。
習氏はテレビ演説で「一部の企業は苦境に立たされ、また就職が厳しく日々の
暮らしに困る人々もいた」と述べ、中国が「逆風」に直面していることを認めた。
そして「これら全てのことを念頭に置いている」とした上で
「経済回復の勢いを強固にし、強めていく」と明言した。
習氏の演説に先駆けて、中国国家統計局は12月の製造業購買担当者
景気指数(PMI)は49.0だったと発表。
前月の49.4から低下し、6カ月で最低水準に落ち込んだことが示された。
PMIが50を上回ると景気拡大、下回ると景気後退と判断される。
PMIが50を下回るのは3カ月連続。
中国経済を支える巨大な製造業は昨年、年間を通してほぼ低迷していた。
経済活動は第1四半期にわずかに持ち直したが、
PMIは4月から5カ月間、50を割り込んだ。
9月に50を上回ったものの、その後再び50を割り込んだ。
中国は長引く不動産不況や記録的な高水準にある若者の失業率、依然として
続いている物価の低迷、地方政府の財政負荷の増大などの問題を抱えている。
中国政府は昨年、立て続けに支援策を打ち出し、今年は財政・金融政策を強化すると
宣言するなど、経済成長を回復させ、雇用創出を促進しようと取り組みを進めている。
中国経済が一段と減速した場合の日本経済と日本株への影響を考える
●日本の輸出相手国第1位の中国で景気が冷え込めば輸出が減少し日本経済のマイナス要因に。
●中国で不動産市場低迷に起因する金融ショック発生なら、主要国の株式市場が動揺する恐れも。
●ただ貿易や金融取引を通じた影響は抑制可能で、中国当局の対処を冷静に見守ることはできる。
日本の輸出相手国第1位の中国で景気が冷え込めば輸出が減少し日本経済のマイナス要因に
9月6日付レポートでは、中国経済減速の背景と今後の焦点について解説しました。
今回は、仮に中国経済が一段と減速した場合、日本経済と日本株に
どのような影響が生じるか、考えてみます。
影響の伝達経路として、「貿易取引」や「金融取引」が考えられますが、
まずは貿易取引からみていきます。
財務省のデータによると、2021年の日本の輸出相手国第1位は
中国(シェア21.6%)で、2位は米国(同17.8%)でした。
中国向け輸出品の上位は、半導体等製造装置(シェア7.2%)や、
半導体等電子部品(同6.9%)などです。
中国景気が大きく冷え込めば、これらを中心に輸出が減少し、
日本経済のマイナス要因になる恐れがありますが、
実は中国向けの輸出は、すでに2023年7月まで8カ月連続で減少しています。
ただ、米国向けや欧州連合(EU)向けの輸出が増加しており(順に22カ月連続、29カ月連続)
今のところ日本経済への影響は限定的となっています。
中国で不動産市場低迷に起因する金融ショック発生なら、
主要国の株式市場が動揺する恐れも
次に、金融取引を通じた影響を考えます。例えば、中国において、
大手不動産業者の債務不履行(デフォルト)や、不良債権問題で
金融機関に巨額の損失が発生したと仮定します。
この場合、大手不動産業者の有価証券を保有する投資家が、損失補填のために
他の資産を売却するとの思惑や、中国向け与信残高の大きい国に金融不安が
広がるとの思惑が強まり、日本など主要国の株式市場が動揺することが予想されます。
しかしながら、中国では国をまたぐ資本移動が制限されているため、中国国内で
金融ショックが発生しても、海外への直接的な波及は相当程度抑制されると思われます。
また、日本の中国向け与信残高は825億ドルと、全体の9.6%を占めていますが(図表1)、
日本の対外資産残高は10.2兆ドルに達しており、そもそも中国は、
日本、ドイツに次ぐ世界第3位の対外純債権国です(2022年末時点)。
ただ貿易や金融取引を通じた影響は抑制可能で、
中国当局の対処を冷静に見守ることはできる
弊社(三井住友DSアセットマネジメント)は、中国経済減速の影響が、貿易取引を通じて
世界的に波及する動きは抑制可能であり、金融取引を通じた影響についても、中国国内の
金融機関に深刻な問題が生じなければ、世界経済への影響は限定的と考えています。
ただ、中国の資本規制や対外純債権の大きさを踏まえれば、金融不安が高まっても、
リーマン・ショックや欧州債務危機のような展開にはなりにくく、中国当局も状況が
悪化する前に、何かしらの策は講じると思われます。
不動産市場の低迷に起因する中国経済の減速は、基本的には中国国内の問題であり、
弊社は日本経済の底堅い推移と(図表2)、日経平均株価の年末に向けた上昇基調の
回復を予想しています。
もちろん、想定外に中国景気が冷え込み、大きな金融ショックが発生するという
リスクには十分な注意が必要ですが、中国当局は強力な市場管理能力を持ち、
経済問題に対処していくと思われることから、比較的冷静に状況を見守ることが
できると考えています。
cnn.co,jpより記事抜粋
中国経済が一段と減速した場合の日本経済に対する影響は
中国経済が一段と減速した場合、日本経済に対する影響は、
主に以下の3つの方面でマイナスとなると考えられます。
輸出の減少
中国は、日本にとって最大の輸出相手国です。
2022年の日本の対中輸出額は、前年比10.3%減の13兆5,600億円と、
すでに減少傾向にあります。
中国経済が一段と減速した場合、さらに輸出が減少し、
日本経済の成長を下押しする可能性があります。
原材料価格の下落
中国は、日本にとって重要な原材料の供給国です。中国経済が減速した場合、
原材料の需要が減少し、原材料価格が下落する可能性があります。
これにより、日本企業の収益が圧迫され、国内投資や雇用が減少する恐れがあります。
金融市場の混乱
中国経済が減速した場合、中国の金融市場が混乱する可能性があります。
中国の金融市場の混乱は、世界的な金融市場にも波及し、
日本株や日本国債の価格が下落する恐れがあります。
具体的には、以下の影響が懸念されます。
輸出の減少による景気減速
原材料価格の下落による企業収益の圧迫
金融市場の混乱によるリスク回避の動き
中国経済の減速は、日本経済にとって大きなリスクです。
日本政府や日本企業は、中国経済の動向を注視し、
適切な対応を検討していく必要があります。
なお、中国経済の減速が一段と進むかどうかは、中国政府の政策次第です。
中国政府が、ゼロコロナ政策の緩和や、財政・金融政策の拡大などにより、
景気回復を図った場合、日本経済への影響は限定的となる可能性があります。
三井住友DSアセットマネジメント記事抜粋
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